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2020.05.16

お家でできる環境づくり(その3)-環境教育-

臨時休園が延長される中「家庭でできる環境づくり」も3回目になりました。
コロナウイルスの新規感染者は減少傾向にありますが、緊急事態宣言が解除されるまで今しばらく臨時休園のご協力をよろしくお願いします。
緊急事態宣言解除後も、まだ不安はあると思います。しかし、この様な状態が続くと、子どもの育ちや学びに深刻な問題が生じることでしょう。この感染症については、長期にわたり新たなウイルスとともに生きていかなければならないという認識に立ち、可能な限り感染リスクの低減を図りつつ、幼稚園を再開しなければならないと感じるこの頃です。

さて、ひっそりとした幼稚園では、子どもたちに会える日に思いを馳せながら、おしごとの先生と一緒にお家や年少さんのおしごとの準備を進めています。
お部屋の様子を少しだけご紹介します。


日常生活の領域

言語の領域


文化の領域  数の領域


あかぐみさんのお部屋

今日はモンテッソーリメソッドにおける「環境教育」をベースに、「お家でできる環境づくり」について考えてみたいと思います。
幼児期の子どもは「環境」を通して「動きながら学ぶ」という特徴があります。
モンテッソーリメソッドにおける学びは、
これまでの大人が「教える」子どもが「教えてもらう」「習う」といった図式ではなく、子どもが「自分で教材を選んで」自分で「やってみて」自分で「できるようになる」という図式です。
子どもが主体で、「よく観て、やってみて、自分で修正しながら」「〇〇を学ぶ、〇〇を覚える」のです。
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グローバル化や人工知能・AIなどの技術革新が急速に進み、予測困難なこれからの時代。20年後には今ある職業の半分がなくなって、新しい職業ができるといわれています。そのような時代、子どもたちには自ら課題を見つけ、自ら学び、考え、判断して行動し、よりよい社会や人生を切り拓いていく力が求められています。そして、モンテッソーリの「環境教育」が改めて見直されています。
「環境を通した学び」では、幼児の「自発性や主体性」を大切にすると同時に、環境の中に教師の「教育的意図や計画性」が存在しています。
かつて経験論主義に基づいて展開した自由保育とは一線を画します。自由な環境の中で、経験を増やすだけではなく、経験と同時に「知性」の育ちに注目し、「環境」の中に「知性」の育ちを助ける要素が含まれているのが特徴です。

子どもの学びは「知性の法則」に導かれています。
動きながら、自分で修正しながら、より正確に、より困難なものへとチャレンジしていこうとする傾向があります。これが『知性の法則』です。
そう言われてみれば・・・以前できなかったことが、教えていないのにできるようになったとか・・・思い当たる方もいらっしゃると思います。

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それでは、「知性」の育ちを助ける要素が含まれた「環境」についてご紹介します。


1回切り・・・はさみを使い始めた頃のお仕事です。線をよく見て線の上を切りますよ。

少し長い線になりました。紙をしっかり持ちながら、線の上をはさみを連続開閉して切ります。

対象図形の切り紙。線も曲線になり、はさみを持つ手と紙を持つ手、両方を同時に動かす困難性が出てきました。

自分の思い通りに切れるようになると、切り紙もどんどん楽しくなり、より難しいものを求めるようになっていきます。

自分で絵を描いたり、切ったものを貼ったり・・・いくつかの作業をつなげて、長い工程の工作活動などに発展していきます。

思い通りに動く、しなやかな手ができてくると、活動の幅が広がり、自然に「難しさ」や「正確さ」を求めて興味が進んでいきます。
これが「知性の法則」です。

知性の育ちにつながる要素が、日常の活動にたくさん含まれていることが分かりましたか?

他にも 折り紙やのりで貼る作業などいろいろありますね。

子どもが何かの活動に集中している時は、「知性の法則」に従って自分自身を教育している時です。
「ぴったり」とか「まっすぐに」といったところを意識できるようになれば、数学の基本のキともいえる「正確さ」を求めるようになっていきます。

さらに、連続した動きについては・・・

<物を運んで座る・立つ>
物を運び机に静かに置く⇒椅子を引く⇒座る⇒椅子の両脇を持ってを少し机に引き寄せる。机とお腹の間はげんこつ一つ分あける。

椅子を後ろに少し引く⇒足を横にむける⇒立つ⇒椅子を机に入れる⇒物を持ってあった場所に戻す。

<鉄棒>
手のひらを上向き⇒鉄棒をグー握りする⇒あごを引く⇒肘を曲げる⇒体とお腹をを鉄棒に惹きつけながら⇒足を垂直に振り上る~この時、肘は曲げたまま~おなかと鉄棒はできるだけ近寄せる~など

連続した動きには「動きの分析」や「記憶」や「順序だて」が必要になります。

まだ「基本のキ」ですが、このようなことが後に「数学的概念」や「論理的思考」に通じていきます。

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日頃の何気ない動きを少し意識して見たり、行動することで、子どもは変わっていきます。

間違えても、すぐに注意したり、訂正せず、また強制したり、練習させることをないで、
子どもの試行錯誤が許されるゆとりを大切にしてください。
子どもが自発的に主体的に活動する時、「知性の法則」に従って動いていることが見えてくると思います。

大人もそんな子どもの姿を見守れる心の余白が大切ですね。

桜美林幼稚園 副園長 冨田恵美子